院長コラム
京都市 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの定期予防接種につきまして
2022年05月31日
子宮頸がんは年間約1万人の方が罹患し2020年には約2900人の方が子宮頸がんが原因で亡くなっています。
子宮頸がんは大部分(95%)がヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因で発症します。
HPVは人にのみ感染するDNAウイルスで、ほとんどが性的接触のような濃厚な接触により感染します。
感染しても症状がなく、数年から数十年してから子宮頸がんを発症し、20代・30代でも発症し
社会生活に重大な影響を及ぼす事が問題となっています。
子宮頸がんに対する対策としては性的接触前のHPVワクチン接種と定期的な検診受診が重要となります。
日本では2010年度からHPVワクチン接種に対する公費助成が開始され、2013年4月に定期接種化されましたが
、接種後の広範な疼痛や運動障害等の多様な症状が報告され、同年6月に接種の積極的勧奨の一時差し控えが発表されました。
その後、国の審議会において安全性に特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを上回る
と認められたことから,2021年11月勧奨の再開することが決定されました。
それを受けて京都市では2022年5月より小学校6年から高校1年相当(2006/04/02~2010/04/01生まれ)および
積極的推奨の差し控えにより受けれなかった1997/04/02~2006/04/01生まれの女性に対し順次個別接種の通知が送付されます。
HPVは200種類以上が発見されていますが、HPVに起因するがんから発見されるウイルスをハイリスクHPV、
尖圭コンジローマなどの良性のいぼから発見されるウイルスをローリスクHPVと呼んでいます。
京都市で公費で接種可能なHPVワクチンはハイリスクHPVであるHPV16/18感染を予防する2価ワクチン(サーバリックス)と
それに加えローリスクHPVであるHPV6/11感染も予防できる4価ワクチン(ガーダシル)の2種類でいずれも3回接種が必要です。
うつタイミングはそれぞれ若干異なりますが、いずれも6ヶ月程度かかるため公費で自己負担なく接種を受けるためには
定期接種の適応期間内に接種を終了するよう打ち始める必要があります。
これらのワクチンを接種する事で子宮頸がんの原因の50-70%を防ぐ事ができるとされています。
HPV16/18は発がんまでの期間が短い事が知られており、若い世代の子宮頸がん、特に20代の子宮頸がんは
90%がHPV16/18型によるとされています。
当院では公費接種であれば原則4価ワクチン接種をお勧めします。
国内で他に接種可能なHPVワクチンとしてHPV6/11/16/18に加え、HPV31/33/45/52/58もカバーした9価ワクチン(シルガード9)
がありますが、4価に加え、さらに5種類のハイリスクHPVをカバーする事で
子宮頸がんの90%近くを予防できるのではないかと期待されています。
公費での定期接種の対象とはならず自費での接種となり、他のHPVワクチンと同様3回接種が必要となります。
ワクチン自体が高額であり当院では税込み25000円×3回で接種可能です。
また接種には全例登録が必須とされておりワクチンQダイアリーという登録システムに登録頂く必要があります。
登録にはスマートフォン、タブレット端末と通知を受け取れるメールアドレスが必要となります。
当日登録頂く事も可能ですが、事前に登録して頂いておくと接種当日スムーズにいきますのでなるべく事前に登録をお願い致します。
ワクチンQダイアリー登録はこちら
9価ワクチンは現在公費対象とするか検討中との事です。
いずれ公費対象となる可能性が高いように思いますが、すでに感染したHPVやすでに進行し始めた病変に対しての効果は無い事から
いたずらに9価ワクチンが公費対象となるのを待つよりは4価ワクチンを打つ方がよい方もおられると思います。
9価ワクチンは高価ですが子宮頸がんになった時にかかる医療費や人生への影響を考えるとべらぼうという訳でもないようにも思います。
当院で接種を希望される場合ワクチン取り寄せの都合上3営業日前までに電話にてご予約下さい。
公費で4価を打つべきか自費で9価をうつべきか悩む場合には一度受診頂きご相談させて頂きますが、
そういった場合には婦人科で相談なさった方がよいかもしれません。
HPVは子宮頸がんだけでなく、尖圭コンジローマといった良性疾患の他
中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんの原因になる事が知られており、海外では男性も公費の適応となる国もあります。
男性で接種を希望される方は公費では接種できず自費となり、女性と同様3回の接種となります。
当院ではガーダシルを税込み 15000円×3回で接種可能です。
シルガード9は接種は可能ですが、適応がないため万が一有害事象が起こった場合に公的な救済制度を受ける事ができないため
当院では現時点では接種不可とさせて頂きます。
当院でHPVワクチンを接種される場合年齢は12歳以上とさせて頂きます。
18歳未満の型は少なくとも初回は保護者の付き添いをお願い致します。
多くの国で子宮頸がんが減っている中、日本はワクチン接種が止まっていたため増えているというのは望ましい状態ではないと思います。
自分がいくら気を付けていてもパートナーが既に感染しているかどうかは症状もないため分かりません。
気を付けても防ぐ事ができないがんも多い中で予防できる手段があるというのはとても重要な事です。
新型コロナワクチンで筋肉注射やワクチンに慣れた方も多いと思います。
残念ながら新型コロナワクチンは現状では決して高くない重症化率を下げるという効果にとどまり、
人によっては副反応に見合わないと感じられるかもしれません。
HPVワクチンは多少の副反応があったとしても見合う価値のあるものではないかと個人的には思います。
HPVワクチンを希望される方は診療時間内に電話(075-415-5050)にてお問合せ下さい。
また、当院ではお力になれませんが20歳以上の女性の方は子宮頸がん検診も是非受診されるようなさってください。