形成外科コラム

粉瘤 Q&A 手術法編【くりぬき?切除法?どちらがいいの?】

2023年10月01日

京都市上京区 今出川駅から600m 西陣エリアにあるうつぼや町クリニック 形成外科専門医 上田真帆(医学博士・漢方専門医 京都大学卒)です。

当クリニックでは手術は保険診療をメインで行っています。
粉瘤治療は保険診療で行っています。

以前にも粉瘤については書いていますが、

外来で
くりぬきで手術してもらえるのでしょうか

と聞かれることがしばしばあるので、改めて手術方法だけの解説を記載しようと思いました。

インターネットでよく調べてこられる方ほど、粉瘤の治療ではくりぬき法がよさそうに思うのではないかなと思いました。

年間300例以上の保険診療での皮膚皮下腫瘍手術を行い手術痕の経過を追っている私は

超音波検査でまず間違いなく粉瘤となら診断されるならば、

くりぬき法(改良型)を第一選択

としています。

当院で行うくりぬき法は、原法から改良しております。
まず原法の紹介です。
公益社団法人 日本皮膚科学会のHPからくりぬき法の詳細について以下の通り拝借しました。

へそ抜き法(くり抜き法)という簡単な手術法もあります。これは局所麻酔をして、表面の皮膚開口部にトレパン(ディスポーザブルパンチ)という直径4mmほどの円筒状のメスを刺し込み、表面の皮膚とともに袋状構造物の一部をくり抜きます。くり抜いた後、内容物をもみだしながら袋そのものもできるだけ取り除きます。基本的に傷の部分は縫い合わせず、開放創として治癒させます。切除手術に比べると施術時間が短いという長所がありますが、完治までの日数は長くなります。
(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa17/q09.htmlより抜粋)

うつぼや町クリニックで行っているくりぬき法(改良型)について説明します。

視診のみでなく、

術前に超音波検査を併用して

腫瘍の形態、皮下への浸潤度を直前に把握、
粉瘤に特徴的な像(後方エコーの増強)の確認、
悪性腫瘍除外のため周囲や内部血流をカラードプラ―で確認し、腫瘍周囲血流や腫瘍内への血流流入がないことを確認

を行い、まず99%以上粉瘤であろうと確認したうえで行います。

その理由としては、くりぬき法はまず腫瘍を破壊して内容物を圧出することで腫瘍を小さくして壁のみ取り出す方法です。
視診のみでは、粉瘤のような外見の悪性腫瘍の場合、腫瘍を傷つけて悪性細胞を周囲にばらまくリスクが発生します。
悪性腫瘍をむやみに傷つけてしまうリスクを最大限下げるために、カラードプラ―検査を併用した超音波検査を術前に行っています。

また術直前に担当医自ら超音波検査を行うことで、
皮下の腫瘍のできものの形態・位置関係をよりリアルに把握することができます。
これにより取り残しのリスクを下げます。

超音波検査で、粉瘤と判断したら、そのまま超音波ガイド下に局所麻酔を行います。
超音波ガイド化でおこなうことで、粉瘤の壁に沿って局所麻酔の液を正確に注入することが可能となり
その水分を注入することが粉瘤の壁の剥離になります。
この際、剥離が容易でない場合は、壁と周囲組織の癒着が想像されます。

次に切開線を決定します。
原法とはちがい、トレパンを使用しません。
エコー所見や局所麻酔液をいれたときの癒着の程度から、壁が取り出せる最小の大きさで切開の大きさを決定します。

切開を加え、腫瘍内容物を圧出して、壁のみにしてから取り出し、縫合して終了します。

この方法を行いことで、取り残しがなく(再発せず)傷跡の小さい治療を行いことができます。

当クリニックで切開法を行う場合について説明します。

切開法に関しては、
同じく公益社団法人 日本皮膚科学会のHPから拝借いたしますと

通常のアテロームでは、表面の皮膚を紡錘形に切開して、嚢腫のみを摘出します(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa17/q09.htmlより抜粋)

という方法です。

切開法を行った際は腫瘍直径の、おおよそ1.2倍ほどの傷跡になります。

これは、エコーにて悪性の可能性が否定できず、腫瘍を傷つけずに取り出したいときに使用します。
(強く悪性が疑われる場合は、エコーのみの検査で手術は行わず、MRIやCTといったより精度の高い画像診断をおすすめしていきます。)

私が形成外科の保険診療を行う上で大事にしていることは、
まずは
①確実な治療を行うこと
②それにあわせてできるだけ傷跡がめだたない 整容的に優れた手術を行うこと
です。

確実な治療とは、粉瘤などの皮下腫瘤の場合はとりのこしがないこと、悪性の腫瘍が疑われるときは適切に一時切除・次に再建ができることです。

その方針に従って、粉瘤に対する手術方法を以上のように選択しています。

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