院長コラム
逆流性食道炎について
2021年09月25日
本年4月に日本消化器病学会より胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2021が発表されました。
当院を受診される患者さまはまだ少数ですが、その中でも何人かが逆流性食道炎と他院で指摘されており、
お薬をどのように飲めばいいのか、特に飲み続けてもいいのか、むしろ飲み続けた方がいいのかという事について
疑問に思っておられました。
逆流性食道炎というのは胃食道逆流症(GERD)の一部であり、
GERDは実際に粘膜に炎症がある逆流性食道炎と粘膜障害はないものの逆流症状がある非びらん性逆流症(NERD)に分類されます。
本邦においては逆流性食道炎の有病率は10%程度、NERDの有病率は18%程度とされており、
実際には食道に炎症はないものの胸やけ症状を訴える方の方が多いとされています。
GERDの原因としてよく言われるのが食道と胃のつなぎ目が緩む食道裂肛ヘルニアによる胃酸の逆流ですが、
それ以外にも、飲み込む時に食道と胃のつなぎ目の圧が下がったりする事や酸性でない液体の逆流も症状の原因になる事があります。
NERDは軽症の逆流性食道炎であると考えられてきましたが、逆流性食道炎に比べ胃酸を抑える薬剤への反応があまりよくなく、
酸性でない液体の逆流や食道の知覚過敏の関連性も大きいと考えられるようになってきているそうです。
GERDを誘発する要因としては、高強度の運動、高脂肪食、肥満、背中が曲がることによる腹圧の上昇、ストレスによる
食道知覚過敏などがあります。
自分は逆流性食道炎と言われているとおっしゃる患者さまは多くいますが、実際にはNERDである方も多い印象を受けます。
実際に食道に炎症があったのか、単に症状から逆流性食道炎と言われているだけなのかというのは分からない事がほとんどであり
実際に酸の逆流があるのか、食道と胃のつなぎ目の圧はどうかというのを調べる方法は存在しますが気軽にできるものではありません。
胃酸を抑える薬剤をどのように飲めばいいのか、という問題に関しては、長い間主流であったPPIというタイプのお薬(オメプラゾール、
ラベプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール)は長期的に内服する事による弊害も色々と報告されていますが
影響は限定的であるという事になっており、メリットが上回るようであれば長期内服する事は問題ないと考えられています。
ただ長期投与により肺炎や認知症、骨粗鬆症などが増えるという報告もあり、漫然と内服し続ける事は避けるべきのように思います。
最近増えてきたP-CABと呼ばれるタイプのお薬(ボノプラザン)は新しい薬剤であり長期投与による安全性についてはデータが乏しいため
何とも言えないという事になっています。
実臨床においては、胸やけ症状があれば
①まず胃カメラをして、がんなどが原因でないか、実際に炎症があるのかを確認。
②胃酸を抑える薬を試して、有効であれば一定期間内服して一旦終了。
③再燃があれば再度内服し、調子が悪い時だけ一定期間内服。
④結局頻回に飲む必要があるようであれば長期投与を検討、
⑤最初から無効な場合は漢方などの他の薬剤の併用もしくは切り替えを試す
というのが現実的な方法ではないかと考えています。
胸やけで困っている、現在のやり方でいいのかよく分からないなどあればお気軽にご相談下さい。